会社の帰りなのか、彼女はスーツ姿だった。

「お待たせしました」

伊地知がカクテルが入ったグラスを藤本の前に置いた。

「いらっしゃいませ」

丸椅子に腰を下ろした英恵の方に視線を向けると、伊地知はあいさつをした。

そこへ、
「どうもー」

黒髪短髪の男――京極竹司が来店してきた。

「いらっしゃいませ」

あいさつをした伊地知に、
「マスター、あけましておめでとう…と言うよりも、久しぶりかな?」

京極は笑った後、丸椅子に腰を下ろした。

「いつものちょうだい」

そう言った京極に、
「かしこまりました」

伊地知は返事をした後、また手慣れた手つきでカクテルを作り始めた。