「じゃあ、そうしよっかな」

若菜は笑うと、自分のデスクのうえに書類を置いた。

その様子を見ながら、
「悪いな、手伝わせちまって」

京極は声をかけた。

「気にしなくていいよ。

京やんは入社した時からの友達だから、手伝うのは当然のことだよ」

若菜が言った。

「課長にも後で連絡をしとくよ。

こんな時間まで奥さんを手伝わせてすみませんでした、って」

そう言った京極に、
「そんなことしなくてもいいよ。

わたしが望んでやっていることなんだし、正文さんもわかっているよ」

若菜は笑いながら言い返した。

「それにしても…長く勤めていた会社を辞めるなんて、相当勇気がいったんじゃない?」

笑うのをやめると、若菜は言った。