29年間生きてきた人生の中で外泊、それも男の家に泊まったのは初めてのことだった。

京極が用意してくれたスウェットやタオルはまだ新品なのか、少しだけ匂いが残っていた。

なれたように用意してくれたところを見ると、彼の家に泊まりにきている人物が多いのかも知れない。

英恵はそんなことを思いながら眠りについた。

父親が待っている家に帰りたくないからと言う理由で、仕事以外で初めての外泊をした。

一応と言ってはおかしいが、国光と蘇芳に外泊することをメールで伝えたら、
『そろそろ、父さんと仲直りしなよ』

国光からそんなメールが届いた。