ホテル内のカフェで櫻子は手元の資料に視線を落とした。

「そいつ、とうとう精神をおかしくして閉鎖病棟に入院したらしいぜ」

バカにするように久仁城が言った。

「へえ、まだ死なないんだ」

櫻子もバカにするように言うと、紅茶を口に含んだ。

「しっかし、あんたも陰湿だな。

会社を潰したうえに、精神的におかしくさせるように仕向けるなんてな」

タバコを口にくわえた久仁城に、
「やるからには徹底する、って言うのがあたしの基本なの。

こいつもあたしをいじめなければ、こんなことにはならなかったのにね」

櫻子はピンと、資料を指で弾いた。

それから腕時計に視線を向けると、
「あら、もうこんな時間だわ」

櫻子は椅子から腰をあげた。