「うぅ…っ…っ……」

人通りの多い道で人目も気にせず泣くわたしを見て、不思議そうに見ながらも通り過ぎていく人たち。

−−−−−−「ごめん、別れてほしい。」

うん。知ってたよ。直輝の気持ちが、もうわたしには向いていないってこと。
優しい直樹だから、なかなか言い出せずにいたってことも。
今までありがとうって、笑顔で言えたらわたしにも少しは可愛げがあったかもしれない。
少しでも別れなたくないって言えば、変わってたかもしれない。
今になって後悔が押し寄せて、勝手に涙が溢れてくる。

「わたし、何してんだろう。」

今まではどうってことなかった一人暮らしの部屋も、今になると急に寂しくなる。このままじゃいけないって分かってても、動き出せないのが本当のところ。
誰にも会いたくないのに嫌でもお腹は減るもので、嫌々買い物に出かける。

「にんじんと、じゃがいもと…」

今日はカレーしようと思い、近所のスーパーで買い物中。

「あれ?唯??」

少し低めで聞き覚えのある声。

「え…?海斗…?」

「やっぱり唯だ!何でいるんだよ!?」

久しぶりに会ったのに失礼なことを言ってくるコイツは、小中同じだった佐藤海斗。

「なんでって…大学、この近くなの。」

「そうなんだ!俺もここから大学近いんだよ。奇跡的な再会だな〜!」

そう言って綺麗な顔をくしゃってさせて笑う海斗は、昔から何も変わってなかった。

「家、どの辺なの?」

「ん?こっから5分くらいのとこ。唯はどの辺?」

「わたしもここから5分!」

「俺ら、同じアパートなんじゃね?!」

いやいや、そんな偶然はないでしょって内心思ってたけど、そんな偶然もあり得るものだった。

「うそでしょ…?!」

わたしと海斗のアパートは同じで、それだけでなく隣の部屋だった。

「何で今まで気付かなかったんだろうなー??」

確かに、大学生になってもう4ヶ月が経とうとしている。なのに今まで気付かなかったなんておかしな話だ。

「気付かなかったってこともある意味奇跡的だよな。」

笑いながら海斗が言った。確かにここのアパートに住み始めた時、隣に挨拶に行ったのに居なかった。
だから挨拶の品をドアに掛けておいた。

「ってことは、ドアに掛かってたのも唯からなの?」

「うん、そうだよ。」

「確かに松崎って書いてあったけど、まさか唯とは思わないよなー!」

「何回か挨拶に行ったのになかなかタイミング合わなくて…。改めて、これからお隣よろしくね!」

「おう!女一人で住むのは物騒だし、なんかあったらすぐ来いよ!」

海斗とは別れて自分の部屋に入る。
あー、明日授業入ってたな。何限目だっけ?沙也加に聞いてみよ。

--明日何限目に入ってる?

----二限目からだよーん☆

はぁ、こんなに大学行きたくないってことある?いつまで経っても忘れられない直樹のこと。
良い加減忘れなきゃ、いろんなことに支障が出てくる。
明日に備えて今日は寝ようかな。カレーは明日作ろう。