手持ち無沙汰になって、目についた喫茶店に入り珈琲を啜る。
勝手なイメージで、珈琲が好きな人だと思っているから、もしかしているんじゃないかと思ったけれど、あの人どころか一人も客はいなかった。
だけど、レトロな店内の雰囲気と、うしろボタンのワンピースがすごくマッチしていてこれはこれで気分が良い。
「…ふぅ」
…せっかくワンピース着て来たのに会えなかった。
でも、
会えなくて悲しい、ワンピースを見せたい
というこの気持ちはやっぱり、恋なんだろう。
ほんのり甘い珈琲の湯気で火照る頬を隠すように、カップに口を付ける。
「ーー素敵なワンピースですね」
カウンターの奥からマスターがわたしに声をかけた。
喫茶店のマスターです、と顔に書いてあるかのようなおじいさん。
喫茶店の外で会っても「喫茶店経営してますか?」と聞いてしまいそうなほどだ。

