【短編】ボタンと珈琲




「いらっしゃいませ」


一ヶ月ですっかりディスプレイも品揃えも変わっていることに驚きつつ、あの店員を探す。


ちゃっかりワンピースも着てきたしあっちから気付いてくれないかな、なんて淡い期待を抱いて。


「そのワンピース、うちのですよね。とてもお似合いです」


後ろから声をかけられて振り返ると、お目当の彼ではなく、人当たりの良さそうな女の子。


…まあ、声でわかってはいたけれど。

すこしドキッとしたのと同時に残念な気持ちになったことに気づいた。

…どうやら今日はいないみたいだ。


「ありがとうございます。また、買いに来ます」


その子に告げ、店を出て歩き始めた。