【短編】ボタンと珈琲




そこからは、うわの空で会計を済ませ、フラフラと帰路についたのだろう。

次の日に目が覚めると、新しいワンピースがハンガーで窓際に吊られていて、背中のボタンが朝日を反射して光っていた。


ああ、彼の名前は何というのだろう。
どこに住んでいて、いくつなのだろう。
お休みの日は、公園でコーヒーを啜ったりするのだろうか。


窓から入る風がわたしの髪をなびかせるだけで、彼がわたしの髪に触れたことを思い出す。


こんなキラキラして甘酸っぱい気持ちは久しぶりすぎて、慣れない。