【短編】ボタンと珈琲




店を出ると、もう街が夕焼けに染まっていた。

並木道はイチョウの葉が絨毯のように広がっていた。


時間が止まっているような店だったなあ、とマスターのことを思い出しながら足を進める。


迷うことなく向かうのは


「いらっしゃいませ」


ワンピースを買った、あのお店。


彼がいなくても、ファーティペットの女の子に彼がいつ来るのかちゃんと聞こう。

寒くなる前に、ワンピースのお礼を言って、彼のことを知ろう。