【短編】ボタンと珈琲





「その人はどこにいるんだい?」

「このワンピースを売っていたお店です。
今日行ったらお休みなのか、いなかった」


わけもなく珈琲をスプーンでくるくると混ぜて、小さく溜息をつく。

明日からまた仕事。
次の休みにまた来れるかな。



「そうだなあ。
…たぶん、だけど、寒くなるまでに会えると思うよ」



その言葉に、思わず珈琲カップから視線をあげる。

マスターの、何でもわかっているような瞳。


「…マスターに言われると、そんな気がします」


わたしの言葉にマスターは微笑んで、またその人に会えた時においで、と珈琲をサービスしてくれた。