部屋に入ると、沙紀の顔が思い浮かんだ。
・・・
沙紀と出会ったのは、高校の入学式。
他市の田舎から来たらしく、一切友達はいないように見えた。
整った顔。笑ったときの三日月目。
全部が可愛らしかった。
俺はそんな沙紀に、一瞬で心魅かれた。
性格も優しくて、頭も良くて。
おとなしく控えめな子だった。
偶然にも学科は同じだ。
俺は単純に毎日話しかけたい。そう思っていた。
両想いじゃなくても、べつによかった。
ただ、そばにいてくれるなら。
沙紀が、彼女じゃなくて、ただの友達でも。
俺はそれでよかったんだ。
でも、現実はそうもうまくいかなかった。
たしかに沙紀はいろんな男子から話しかけられていた。
やっぱり人気が高かった。
だから俺も話しかけることができなかった。
勇気のない、みじめな俺がいた。


