この世にただ一人の、私の息子、雅人。
雅人に初めて彼女が出来たこと、それはあのお祭りの日からわかっていた。
普段なら、私服でお祭りに行くのが雅人だったのに、なぜか今年は浴衣。
もしも彼女にお願いされたら、きっと浴衣で来るだろう。
そんな、母の勘だった。
雅人は極端な恥ずかしがりで、友達に浴衣をお願いされても、絶対に着ない。
親の私でさえ、全く言うことを聞いてくれなかった。
“俺はそういう趣味じゃないんだよね”
そんなことばかり。
でも今年は自分から浴衣を着て、出かけた。
彼女が出来たんだ、そう私は確信した。
母である私は、嬉しかった。
結婚までしてほしい、孫の顔を見たい。
それから私は、もしよければお父さんと距離がもう一度縮まないか。
そう思っていた。
息子の結婚を機に、仕事一筋の旦那の気持ちを、もう一度。
そしたらきっと私も、雅人も幸せになれる。
何の心配もせず、暮らしていける。
そう思っていた。


