ピンポーン
約束の時間ちょうど。
時間は必ず守る沙紀が、今日も約束の時間ぴったりに来た。
俺は、玄関まで出て、沙紀を出迎える。
「…雅人、久しぶり。元気なさそうだけどどうしたの…?」
「俺はべつに元気だよ。まあ入れよ」
沙紀が心配そうな顔をして俺を見つめていた。
すっかり空っぽになった俺の心が、顔に出ているようだった。
「初めまして、お母さん、ですか?」
沙紀が母さんに会うのは初めてのことだった。
一度だけ、沙紀の父親に会ったときの衝撃と恐怖心だけは忘れられない。
沙紀は、すました顔で俺と母さんを交互に見た。
「お話ってなんですか?」
キラキラに輝いた沙紀の目は、これが別れ話だということを感じていない。


