「思い、だしたのね」
「うん」
「・・・」
「気づくのが遅くなってごめんね。
ずっと夢野に迷惑かけてた。」
「そんなことない。」
「あるよ。あるの・・・ごめん」
「謝らないで。私・・・・・」
この間と同じように夢野と夏野を待つ。
次で甲子園に行けるかどうかの試合を目前にする野球部のミーティングはとても長かった。
ーー先に来た夢野に、忘れていた真実を伝えた。
「夢野、ありがとう」
「なに言ってるの?」
誰にも届くはずのない声を聞いてくれて。
ずっと一緒にいてくれて。
「凄く楽しい夏だった」
「まだ終わってないわよ」
今までで一番。
忘れられない最後の夏だった。
「出来るなら来年もその先もずっと3人でいたかった」
「・・・・」
「ごめんね、夢野。
声を、届けてくれてありがとう」
「待って!!」
もう、終わりだ。
本当は行きたくない。
でも、ここにはいれない。
イレギュラーな存在はいなくならなきゃいけないから。
「私、夏野くんのこと本当は好きじゃないよ」
「え?」
「だって、夏野くんが好きなのは・・・・」
「おい、人の気持ちを勝手に代弁すんな」
「夏野・・・・」
この声は夏野には届かない。
・・・・届かない。
「俺は甲子園行くまで言うつもりはない。」
「なんで、夏野くん!分かってるの?」
「分かってる。もう、いっちまうんだろ?
それでも俺は言わない。」
「そう・・・」
「そんな寂しそうな顔しないでよ。
夢野にも夏野にも似合わないよ。
ずっとそばにいる。体は近くにいなくても、心はずっとそばにいる。
泣かないで、夢野。
・・・お別れの時間だ。」
「いやっ!待って!待って・・・」
前の夢野の言葉の意味、分かったよ。
あのまま時が止まれば、きっと3人のままいれたんだよね。
誰1人欠けることなく。
でも、ごめんね。夢野。
「バイバイ、夢野、夏野。
元気でね・・・」