「今日さ授業中に入道雲見て。
まだ梅雨なのにもう夏なんだよね。」
「夢野・・・・」
「早いよねー高校生活ももう半分だよ?
来年は受験だし、今年の夏から勝負だってみんな言うし。
このまま時が止まればいいのにね。
そうすれば・・・・・・・」
「きゃっ!・・・・夢野なんか言った?」
「ううん、なんでもない。
じゃ、私、こっちだから。バイバイ。」
「うん・・・・バイバイ」
突然の風に掻き消された夢野の声。
だけど、はっきりとした夢野の声が響いてきた。
『そうすれば、ずっと一緒にいられるのに。』
・・・・どうゆう意味なんだろう。
夢野は誰と一緒にいたいんだろう?
去っていく夢野の後ろ姿を見つめて、動けない。
7時をすぎて茜色に染まる空。
夕日が辺り一面を照らす。
ざわつく胸を押さえて深く息を吸う。
夏が始まるのはこれからなのに。