そう力強く、あたしに言ってくれた。
でも、その気迫には、いつもとは違う何か真剣さがあり、迫力があり、そして、威圧的だった。
あたしはなんだかよくわからない不安にかられた。
…この人は、過去に、まだ何かあったんじゃないだろうか…?
大切なもの、人を傷つけられた痛み。
その時に負った、自分自身の傷。
それを、ひた隠しにしているようにすら見えた。
この人には、まだ何か、ある。
あたしは、直感的に、そう感じた。
そして、全ての根底は、そこにつながっているような気もしていた。
それを取り除いてあげなければ、彼は本当の意味で自由にはなれない。
囚われているものがある以上、人間は、それにずっと縛られて生きていくのだ。
リュウくんのそれは、とても根が深いのだろうな、と、あたしは何の根拠もないが、そう思っていた。
それを尋ねて良いのか、それとも、尋ねてしまうと、更に彼を殻に閉じ込めてしまうか…。
今のあたしには判断ができなくて、そのまま黙っておく事にした。
あたしの中に、そんなモヤモヤは残るけれど、それでも、また以前のように、彼を殻に閉じ込めてしまうよりは、ずっとマシだ。
だから、その時は、聞かないでおこう、と決めた。
いずれ、話すべき時が来たら、言ってくれるだろう。
そう、考えていた。
そう、幸せだった、その時は。
テーマパークを満喫し、あたしたちは閉園になるまで目いっぱい、そこにいた。
アトラクションを楽しみ、メリーゴーランドにも、観覧車にも乗って、気がついたら閉園時間になっていた。
辺りは、夏だからか、そこまで暗くはなっていなかったが、夕焼けが何とも美しく、そして、どことない儚げな寂しさを醸し出していた。
もう、今日が終わるんだな…。
なんだか、寂しい気持ちになった。
リュウくんと繋いだ手に自然と力が入る。
まだ、帰りたくないな…。
ずっと、こうしていたいのに…。
するとその気持ちを察知したかのように、リュウくんがぎゅ、とあたしの手を握り返す。
そして、あたしに向かって微笑みかけた。
「また来ような。来てくれる?」
「もちろんだよ!すごく…すごく楽しかった…」
何故か泣きそうになってしまっているあたしの頭を、彼は優しく撫でてくれた。
「でも、今日は帰ろうな。送っていくから」
「…うん。ありがとう」
そして、あたしたちは、帰路についた。
「大丈夫。お前との約束も忘れてないし。夕方から会える日あったら、逢おうぜ」
「ホント!?」
あたしの顔が、一瞬にして明るくなった。
帰り道、あたしは家までリュウくんと一緒にいられる喜びと、あたしとの約束を覚えていてくれた彼に、感謝と感動でいっぱいになった。
「そういや、お前、母親の病院に行ったんだってな」
「え!?知ってたの?」
「うん。母親から聞いた。彼女?って聞かれたから、そうだって言っといた」
!!
何てこと!!
あたしはクラスメートとしか言っていないのに!
こんな事なら、たとえ病院でも、もっとマシな格好をしていけばよかった…。
きっと、ダサい子だと思われたろうな…。
あの日は、本当の普段着で、ジーンズにTシャツという服装で行ってしまった。
しかも、自転車…。
「でも」
彼があたしのパニックになった表情を楽しみながら、
「いい子だって言ってたぜ」
「…え?」
「あの若さで、言葉遣いもきちんとしてる。ちょっと重症だけど、それとも向き合って治療しようとしてる。オレに似てる、ってさ」
「…そうだったんだ…」
「それに、素朴で可愛い子だって」
素朴…。そうだよね、そう映るよね…。
わかっていた事とは言え、あたしは少々のショックを隠し切れなかった。
「それだけ、お前が純粋に見えたんだよ」
「そうかなぁ…」
「最近は、高校生の中絶の相談が多いって言ってたぜ。もっと体大事にしないと、って。オレ、そんな事はさせるな、って釘さされたし」
そう言いながら、彼は笑った。
フォローとはわかっていたけれど、それでも、そのあたしへの心遣いが、あたしは嬉しかった。
初めてのデートの、帰り道。
あたし達は、また、お互いに、知らない一面を、少しだけ、知った。
でも、その気迫には、いつもとは違う何か真剣さがあり、迫力があり、そして、威圧的だった。
あたしはなんだかよくわからない不安にかられた。
…この人は、過去に、まだ何かあったんじゃないだろうか…?
大切なもの、人を傷つけられた痛み。
その時に負った、自分自身の傷。
それを、ひた隠しにしているようにすら見えた。
この人には、まだ何か、ある。
あたしは、直感的に、そう感じた。
そして、全ての根底は、そこにつながっているような気もしていた。
それを取り除いてあげなければ、彼は本当の意味で自由にはなれない。
囚われているものがある以上、人間は、それにずっと縛られて生きていくのだ。
リュウくんのそれは、とても根が深いのだろうな、と、あたしは何の根拠もないが、そう思っていた。
それを尋ねて良いのか、それとも、尋ねてしまうと、更に彼を殻に閉じ込めてしまうか…。
今のあたしには判断ができなくて、そのまま黙っておく事にした。
あたしの中に、そんなモヤモヤは残るけれど、それでも、また以前のように、彼を殻に閉じ込めてしまうよりは、ずっとマシだ。
だから、その時は、聞かないでおこう、と決めた。
いずれ、話すべき時が来たら、言ってくれるだろう。
そう、考えていた。
そう、幸せだった、その時は。
テーマパークを満喫し、あたしたちは閉園になるまで目いっぱい、そこにいた。
アトラクションを楽しみ、メリーゴーランドにも、観覧車にも乗って、気がついたら閉園時間になっていた。
辺りは、夏だからか、そこまで暗くはなっていなかったが、夕焼けが何とも美しく、そして、どことない儚げな寂しさを醸し出していた。
もう、今日が終わるんだな…。
なんだか、寂しい気持ちになった。
リュウくんと繋いだ手に自然と力が入る。
まだ、帰りたくないな…。
ずっと、こうしていたいのに…。
するとその気持ちを察知したかのように、リュウくんがぎゅ、とあたしの手を握り返す。
そして、あたしに向かって微笑みかけた。
「また来ような。来てくれる?」
「もちろんだよ!すごく…すごく楽しかった…」
何故か泣きそうになってしまっているあたしの頭を、彼は優しく撫でてくれた。
「でも、今日は帰ろうな。送っていくから」
「…うん。ありがとう」
そして、あたしたちは、帰路についた。
「大丈夫。お前との約束も忘れてないし。夕方から会える日あったら、逢おうぜ」
「ホント!?」
あたしの顔が、一瞬にして明るくなった。
帰り道、あたしは家までリュウくんと一緒にいられる喜びと、あたしとの約束を覚えていてくれた彼に、感謝と感動でいっぱいになった。
「そういや、お前、母親の病院に行ったんだってな」
「え!?知ってたの?」
「うん。母親から聞いた。彼女?って聞かれたから、そうだって言っといた」
!!
何てこと!!
あたしはクラスメートとしか言っていないのに!
こんな事なら、たとえ病院でも、もっとマシな格好をしていけばよかった…。
きっと、ダサい子だと思われたろうな…。
あの日は、本当の普段着で、ジーンズにTシャツという服装で行ってしまった。
しかも、自転車…。
「でも」
彼があたしのパニックになった表情を楽しみながら、
「いい子だって言ってたぜ」
「…え?」
「あの若さで、言葉遣いもきちんとしてる。ちょっと重症だけど、それとも向き合って治療しようとしてる。オレに似てる、ってさ」
「…そうだったんだ…」
「それに、素朴で可愛い子だって」
素朴…。そうだよね、そう映るよね…。
わかっていた事とは言え、あたしは少々のショックを隠し切れなかった。
「それだけ、お前が純粋に見えたんだよ」
「そうかなぁ…」
「最近は、高校生の中絶の相談が多いって言ってたぜ。もっと体大事にしないと、って。オレ、そんな事はさせるな、って釘さされたし」
そう言いながら、彼は笑った。
フォローとはわかっていたけれど、それでも、そのあたしへの心遣いが、あたしは嬉しかった。
初めてのデートの、帰り道。
あたし達は、また、お互いに、知らない一面を、少しだけ、知った。

