あたしは聖羅ちゃんを見やった。
聖羅ちゃんは、無理に笑顔を作っているように見えた。
「大輪花…ごめんね。相良の事になると、あたし、黙っていられなかった…」
「そうだったんだね。ありがとう、聖羅ちゃん…」
あたしは、聖羅ちゃんの肩にそっと手を置いた。
「でも、まだアイツら何してくるかわからないよ。だから心配なんだ。でも、大輪花は、今度こそ、あたしが守ってやるから」
「ありがとう。大丈夫。そんな事にはならないから」
あたしも、精一杯の笑顔を作って見せた。
あたしは幸せ者だ。
こんなにも、心配して、思ってくれている友達がいる。
守ろうとしてくれている、素敵な友達が。
でも、だからこそ、あたしは二人に嘘はつけないと思った。
危うく、相良くんとの秘密も話してしまいそうになったが、それは別だ。
相良くんへの裏切りになる気がして、あたしはぐっとこらえた。
少し、胸が痛んだ。
「絵摩ちゃん、聖羅ちゃん。あたし…実はね…」
「好きなんでしょ?」
あたしが話すより先に、絵摩ちゃんがそう言った。
「え?」
気づいてたの??
あたしは驚きを隠せず、目が思わず丸くなった。
「相良の事。好きなんでしょ?」
笑顔のまま話す絵摩ちゃんの二度目の問いかけに、あたしはこくん、と遠慮がちに頷いた。
絵摩ちゃんは、本当に鋭い。
すごくおっとりしているのに、千里眼並みの洞察力を持ち合わせている。
すごく、人を見る目があるんだろうな。
先見の目があるとでも言った方がしっくりくるだろうか。
絵摩ちゃんはふっと笑って、
「知ってたよー、そんなの。大輪花、わかりやすいんだもん」
「え??どの辺が??」
「必死に隠してたつもりなんだろうけど、顔に出ちゃってたんだよねぇ。好きです、って。それに、相良を見る時だけ、なんだかビクビクしながらも、好奇心いっぱいの目で見てたよ」
「そんなとこまで…」
わかってしまっていたとは。
あたしはどれだけわかりやすい女なんだろう。
その言葉には、聖羅ちゃんも頷いて聞いていた。
「大輪花、相良にシャープあげたろ?あれ、アイツいつも使ってるんだ。だから、心配になったんだよ」
聖羅ちゃんに言われて、忘れかけていたそんな事実も思い出した。
ただ単に、勉強道具や筆記用具を持ってきていないから、使っているだけなのかと思っていた。
違うのだろうか?
だって、相良くんの鞄は、いつも何も入っていないようにペラペラで、勉強道具も、学校に置きっぱなしだ。
筆記用具を大切に持ち歩くタイプでもなさそうだから、不便じゃないように、かと思っていたのだけど…。
「アイツさ、大事なものはいつも持ち歩くんだ。中学の時は、たった一人の友達にもらったペンケースを持ち歩いてた。だから、アイツにとっての大輪花は、他の奴とは少し違う存在な事は確かなんだ」
聖羅ちゃんはあたしの考えを見すいたように言った。
あたしは図星をつかれたように、びくっとした。
確かに、彼にとってあたしは、「少し特別」なのかも知れない。
でも、彼にとっての「好きな人」ではない。
秘密を共有した、苦しみを分かち合えた、仲。
ただ、それだけの関係だ。
「相良本人に聞いたわけじゃないし、聞いたところで教えてはくれないだろーけどね」
悪戯な笑みを浮かべ、聖羅ちゃんがごまかすように言った。
「でも、大輪花がアイツを好きなら、それで良いと思う。あたしも今回の事で、大輪花を守れることがわかったし。だから、これからは応援するよ、大輪花の事」
そう、何か吹っ切れたように笑顔で言ってくれる聖羅ちゃんが、すごく眩しく見えた。
「ありがとう。あたし、片思いかも知れないけど…でも、頑張ってみる」
「うん。大輪花の思うようにしたらいいと思うよ。付き合いたいなら応援するし協力するし。でも、ただ好きなだけでいいなら、そっと見守るし」
絵摩ちゃんが付け足してくれる。
「うん」
あたしはいつの間にか、笑顔になれていた。
それから、あたしは自分の気持ちを否定する事をやめた。
あたしは、相良くんが、好き。
あの、キラキラした笑顔を、いつも見ていたい。
目が合った時の、ドキドキした感覚。
そっと笑いかけてくれる時の、あの眩しさ。
そして…
『大輪花』
そう、一度だけ呼びかけてくれた、あの声。
それらを思い出すだけで、幸せな、楽しい、ウキウキした気分になれる。
恋って、すごい。
あたしを元気にしてくれる。
そのパワーと、二人の素敵な友人がいてくれる事に、本当に感謝の気持ちでいっぱいになった。
それもこれも、あたしは、あの桜の木のお陰だと、直感的に思った。
相良くんも知っていた、あの木。
今度、お礼を言いに行かなくちゃ。
初夏の爽やかな空気が半袖の制服をかすめ、心地よさを運んでくる。
季節は、もうすぐ、夏になろうとしていた。
聖羅ちゃんは、無理に笑顔を作っているように見えた。
「大輪花…ごめんね。相良の事になると、あたし、黙っていられなかった…」
「そうだったんだね。ありがとう、聖羅ちゃん…」
あたしは、聖羅ちゃんの肩にそっと手を置いた。
「でも、まだアイツら何してくるかわからないよ。だから心配なんだ。でも、大輪花は、今度こそ、あたしが守ってやるから」
「ありがとう。大丈夫。そんな事にはならないから」
あたしも、精一杯の笑顔を作って見せた。
あたしは幸せ者だ。
こんなにも、心配して、思ってくれている友達がいる。
守ろうとしてくれている、素敵な友達が。
でも、だからこそ、あたしは二人に嘘はつけないと思った。
危うく、相良くんとの秘密も話してしまいそうになったが、それは別だ。
相良くんへの裏切りになる気がして、あたしはぐっとこらえた。
少し、胸が痛んだ。
「絵摩ちゃん、聖羅ちゃん。あたし…実はね…」
「好きなんでしょ?」
あたしが話すより先に、絵摩ちゃんがそう言った。
「え?」
気づいてたの??
あたしは驚きを隠せず、目が思わず丸くなった。
「相良の事。好きなんでしょ?」
笑顔のまま話す絵摩ちゃんの二度目の問いかけに、あたしはこくん、と遠慮がちに頷いた。
絵摩ちゃんは、本当に鋭い。
すごくおっとりしているのに、千里眼並みの洞察力を持ち合わせている。
すごく、人を見る目があるんだろうな。
先見の目があるとでも言った方がしっくりくるだろうか。
絵摩ちゃんはふっと笑って、
「知ってたよー、そんなの。大輪花、わかりやすいんだもん」
「え??どの辺が??」
「必死に隠してたつもりなんだろうけど、顔に出ちゃってたんだよねぇ。好きです、って。それに、相良を見る時だけ、なんだかビクビクしながらも、好奇心いっぱいの目で見てたよ」
「そんなとこまで…」
わかってしまっていたとは。
あたしはどれだけわかりやすい女なんだろう。
その言葉には、聖羅ちゃんも頷いて聞いていた。
「大輪花、相良にシャープあげたろ?あれ、アイツいつも使ってるんだ。だから、心配になったんだよ」
聖羅ちゃんに言われて、忘れかけていたそんな事実も思い出した。
ただ単に、勉強道具や筆記用具を持ってきていないから、使っているだけなのかと思っていた。
違うのだろうか?
だって、相良くんの鞄は、いつも何も入っていないようにペラペラで、勉強道具も、学校に置きっぱなしだ。
筆記用具を大切に持ち歩くタイプでもなさそうだから、不便じゃないように、かと思っていたのだけど…。
「アイツさ、大事なものはいつも持ち歩くんだ。中学の時は、たった一人の友達にもらったペンケースを持ち歩いてた。だから、アイツにとっての大輪花は、他の奴とは少し違う存在な事は確かなんだ」
聖羅ちゃんはあたしの考えを見すいたように言った。
あたしは図星をつかれたように、びくっとした。
確かに、彼にとってあたしは、「少し特別」なのかも知れない。
でも、彼にとっての「好きな人」ではない。
秘密を共有した、苦しみを分かち合えた、仲。
ただ、それだけの関係だ。
「相良本人に聞いたわけじゃないし、聞いたところで教えてはくれないだろーけどね」
悪戯な笑みを浮かべ、聖羅ちゃんがごまかすように言った。
「でも、大輪花がアイツを好きなら、それで良いと思う。あたしも今回の事で、大輪花を守れることがわかったし。だから、これからは応援するよ、大輪花の事」
そう、何か吹っ切れたように笑顔で言ってくれる聖羅ちゃんが、すごく眩しく見えた。
「ありがとう。あたし、片思いかも知れないけど…でも、頑張ってみる」
「うん。大輪花の思うようにしたらいいと思うよ。付き合いたいなら応援するし協力するし。でも、ただ好きなだけでいいなら、そっと見守るし」
絵摩ちゃんが付け足してくれる。
「うん」
あたしはいつの間にか、笑顔になれていた。
それから、あたしは自分の気持ちを否定する事をやめた。
あたしは、相良くんが、好き。
あの、キラキラした笑顔を、いつも見ていたい。
目が合った時の、ドキドキした感覚。
そっと笑いかけてくれる時の、あの眩しさ。
そして…
『大輪花』
そう、一度だけ呼びかけてくれた、あの声。
それらを思い出すだけで、幸せな、楽しい、ウキウキした気分になれる。
恋って、すごい。
あたしを元気にしてくれる。
そのパワーと、二人の素敵な友人がいてくれる事に、本当に感謝の気持ちでいっぱいになった。
それもこれも、あたしは、あの桜の木のお陰だと、直感的に思った。
相良くんも知っていた、あの木。
今度、お礼を言いに行かなくちゃ。
初夏の爽やかな空気が半袖の制服をかすめ、心地よさを運んでくる。
季節は、もうすぐ、夏になろうとしていた。

