あたしは、なんだか可笑しくなってしまい、フフッと笑った。
相良くん、お母さんの事、尊敬してるんだ。
カードに目を落とすと、さがらレディースクリニックと書かれ、裏に地図が載っていた。
「そっか…。だから、あんなに薬に詳しかったんだ」
「まあな。俺にも必要な分野だし」
「相良くんは、何のお医者さんを目指してるの?」
「オレは…家庭医学医師だな」
「え?何、それ?」
「全分野の病気を治療する所だ。患者の中には、症状から病気が特定できない場合、どこの病院の何科にかかればいいのか、わからない場合がある。それの原因究明から治療まで、一切を行う医師だ」
「…なんだか、すごいね……」
あたしは、彼がこんなに将来像を具体的に描いている事に、感心してしまった。
あたしなんて、将来、何がやりたいのかすら、まだわからないのに…。
「相良くんならできるよ。応援してる」
「おう。サンキュ」
あたしは、ほっこりした気分になりながら、お茶を飲み干した。
玄関まで、相良くんは送ってくれた。
「駅、わかるか?ちょっと歩くからな」
「うん、大丈夫。何となくわかる」
「そっか」
あたしは相良くんの気遣いを嬉しく思いながら、靴を履いた。
「じゃ、お邪魔しました。ありがとう、相良くん」
自然とこぼれた笑みを顔中に讃えながら、あたしは相良くんに背を向けた。
「…大輪花」
「えっ?」
あたしはびっくりして、思わず振り返った。
相良くん、今、大輪花って…。
心臓が、ドキドキと、うるさいぐらいに音を立てて、あたしの心拍数を上げる。
驚きすぎて空いた口が塞がらない状態のあたしに、彼は優しい笑みを浮かべて言った。
「やっぱりお前は、笑顔の方がいい」
顔中が、かあっと熱くなるのがわかった。
ドキドキと鼓動が早くなり、まるで、体中が心臓になってしまったようだった。
あたしは、マトモに相良くんの顔を見る事ができずにいた。
「あ、…ありがとう。じゃ、帰るね」
あたしはその場を逃げるように後にした。
帰りの電車の中、あたしは、何度も彼の声を思い出していた。
『大輪花』
そのフレーズだけが、あたしの頭を支配した。
彼は何故、あんな事がサラッと言えてしまうんだろう。
女の子慣れしているのは、見ていてわかる。
でも…。
まるで、あたしの欲しい言葉が手にとるようにわかるかのように。
あたしの心を、読んでいるかのように。
彼は、あたしの心も、頭も、支配している。
あたしの脳内は、彼に独占されていた。
ふと、電車の窓に写った自分の顔を見ると、ニヤついているような、でも真顔になろうとしているような、複雑な表情を浮かべていた。
相良くん。
何て不思議な人。
あたしは、彼の事をもっと知りたいと思っている自分に気づいた。
妄想ではない。勘違いでもない。
認めたくはないけど、認めざるを得ない。
気付いてしまった。
あたしは、彼に、恋をしている、という、真実に。
相良くん、お母さんの事、尊敬してるんだ。
カードに目を落とすと、さがらレディースクリニックと書かれ、裏に地図が載っていた。
「そっか…。だから、あんなに薬に詳しかったんだ」
「まあな。俺にも必要な分野だし」
「相良くんは、何のお医者さんを目指してるの?」
「オレは…家庭医学医師だな」
「え?何、それ?」
「全分野の病気を治療する所だ。患者の中には、症状から病気が特定できない場合、どこの病院の何科にかかればいいのか、わからない場合がある。それの原因究明から治療まで、一切を行う医師だ」
「…なんだか、すごいね……」
あたしは、彼がこんなに将来像を具体的に描いている事に、感心してしまった。
あたしなんて、将来、何がやりたいのかすら、まだわからないのに…。
「相良くんならできるよ。応援してる」
「おう。サンキュ」
あたしは、ほっこりした気分になりながら、お茶を飲み干した。
玄関まで、相良くんは送ってくれた。
「駅、わかるか?ちょっと歩くからな」
「うん、大丈夫。何となくわかる」
「そっか」
あたしは相良くんの気遣いを嬉しく思いながら、靴を履いた。
「じゃ、お邪魔しました。ありがとう、相良くん」
自然とこぼれた笑みを顔中に讃えながら、あたしは相良くんに背を向けた。
「…大輪花」
「えっ?」
あたしはびっくりして、思わず振り返った。
相良くん、今、大輪花って…。
心臓が、ドキドキと、うるさいぐらいに音を立てて、あたしの心拍数を上げる。
驚きすぎて空いた口が塞がらない状態のあたしに、彼は優しい笑みを浮かべて言った。
「やっぱりお前は、笑顔の方がいい」
顔中が、かあっと熱くなるのがわかった。
ドキドキと鼓動が早くなり、まるで、体中が心臓になってしまったようだった。
あたしは、マトモに相良くんの顔を見る事ができずにいた。
「あ、…ありがとう。じゃ、帰るね」
あたしはその場を逃げるように後にした。
帰りの電車の中、あたしは、何度も彼の声を思い出していた。
『大輪花』
そのフレーズだけが、あたしの頭を支配した。
彼は何故、あんな事がサラッと言えてしまうんだろう。
女の子慣れしているのは、見ていてわかる。
でも…。
まるで、あたしの欲しい言葉が手にとるようにわかるかのように。
あたしの心を、読んでいるかのように。
彼は、あたしの心も、頭も、支配している。
あたしの脳内は、彼に独占されていた。
ふと、電車の窓に写った自分の顔を見ると、ニヤついているような、でも真顔になろうとしているような、複雑な表情を浮かべていた。
相良くん。
何て不思議な人。
あたしは、彼の事をもっと知りたいと思っている自分に気づいた。
妄想ではない。勘違いでもない。
認めたくはないけど、認めざるを得ない。
気付いてしまった。
あたしは、彼に、恋をしている、という、真実に。

