溺れるくらいの愛情を。





部屋に入ると後ろから琉衣さんに抱きしめられた。



琉「…逃げるなよ?」


「は……?」


琉「さっき車の中であいつが言ってただろ、普通は逃げるって。
香苗が逃げたとしても必ず連れ戻すからな。」



どうやら琉衣さんは車の中での会話が気になっていたみたい。
少しだけ声のトーンが落ち込んでいる。
…なんか可愛いかも。



「琉衣さん、私嬉しいよ?
離れていても私の事考えてくれてるんだから。
一緒にいない時でも私の事を第一に想ってくれてありがとう。


っていうか逃げるもなにも、私の居場所はここにしかないじゃん。
…責任とってくれるんでしょ?」



…あの日、私は家族を捨てた。
もう帰る場所は琉衣さんの元しかない。

それにこんなにも私を大切にしてくれてる人から離れるなんて、私には考えられない。




私の言葉に納得した様で、いつもの強気の琉衣さんに戻った。



琉「あぁそうだ。
お前の居場所はここだけだ。
俺の腕の中、特等席だな。

…お前を苦しめるものは全て俺が消していってやる。
俺がお前を幸せにできる唯一の男だということを忘れるなよ。」



私は彼がいないと笑えない。
本当に彼がいないと幸せになんかなれない。
それはもう既にわかっている。


だからこそ離れるなんて絶対にしない。





「……琉衣さん、大好きだよ。」


琉「俺は愛してる。」






私は体を反転させ、向かい合った状態でゆっくりと唇を重ねた。