その時だった。 緊張を打ち壊してくれるような明るいメロディが、急に鳴り響いた。 一瞬、彪斗くんの気が緩んだ。 その隙をついて、どん、と渾身の力を込めて彪斗くんを押した。 突き飛ばすまではいかないまでも、わずかに両腕が解放される。 もう必死だった。 人生史上最高の俊敏さで、わたしは立ち上がって駆けだした!