ありがとう…。
ありがとう、みんな…。
彪斗くん…。
見上げたとたん、大きな影におおわれ、わたしは視界を失った。
息が止まる。
強く強く抱き締められて。
もう、なにも聞こえなくなる。
綺麗な顔が近づいてきて、
わたしはそっと目を閉じ―――
キスをした。
柔らかくて、甘い唇。
わ…すごい…。
好きな人と自然に重ねたキスって…
こんなに胸をおかしくさせるんだ…。
クラクラになりながらも、わたしは彪斗くんの服をつかんで、もっとねだるようにちゅってしてみた。
けど、
彪斗くんは無反応…。
目を開けると、眉をしかめた彪斗くんが、きまずげにチラチラと横目で見ていた。
…きゃぁああ!!
…ぉぉおお…!
黄色い悲鳴とどよめきが、ゆっくりとわたしの耳にフェードインしてきて、
それに比例して、わたしの身体も熱く火照った。
わすれてた…
ここ、ステージの上だった…!
わたしと彪斗くんは弾かれたように離れると、ぺこりとオモチャみたいに礼をして、小走りに舞台袖に逃げ帰った。
けど、そこでも冷やかしがすごくて…
寧音ちゃんや洸くんにさんざんイジられる。
怒りまくる彪斗くんだけど、照れの方が強くてぜんぜん迫力がなく…
わたしは今にも身体が自然発火しそうで、縮こまるしかなく…。
「ちっ!もーこんなうぜぇところいられねぇ!
行くぞ!優羽…!」
「え…ちょ彪斗くん…!」
「さっそくハネムーンですかぁー?さすが彪斗は気が早いねぇー」
「てか!まだ最後のあいさつ残ってるよ!?」
あいさつ…!?
そんなの、どんな顔して出ればいいのっ!?
わたしと彪斗くんは顔を見合わせて…
脱兎のごとく舞台袖から逃げ出した。
けど、
「おいそのバカップル包囲してくれっ!!」
逃げ切るのは、きっと至難の業のようで…。
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