夢中で歌い上げて、
一呼吸つくと、わたしは王子様に―――彪斗くんに振り返った。
そして、あのセリフを言う。
『わたしは、毎日ぼろを着て、下働きしかしてこなかった身』
わたしはまだまだ小さな小鳥。
『裕福でもなければ、由緒正しい血筋でもありません』
時には疲れて、羽を閉じてしまうこともあるかもしれない。
『それでも…』
それでも。
あなたとともに、はばたいて行きたいから…
「こんなわたしでも、愛してくれますか?」
彪斗くんは、しばらくわたしを真っ直ぐに見下ろしていたけれど。
「…もちろんだ。
俺の小鳥」
ゆっくりと跪いて、手を差し伸べた。
「あいしてる。
誰よりも、なによりも、心の底から、あいしてる。
どうか、
俺だけの歌姫になってくれ、優羽」
彪斗くんのばか…。
あいかわらず、俺様なんだから…。
ぜんぜん、セリフが、ちがうよ…。
あふれる涙が、とめどなく頬を伝った。
濡れそぼる頬を片手で忙しくぬぐいながら、
わたしは、差し出された彪斗くんの手を取った。
そしてほほえんで、一言伝えた。
「はい。よろこんで」
その瞬間、
轟くような歓声が、講堂中に響き渡った。
観客席はスタンディングオベーションで、拍手の嵐に耳が割れるようだった。
その中に、聞きなれた声も交じっている。
「優羽ちゃんやったね!」
「彪斗、この幸せもんっ!」
洸くんと寧音ちゃんも、喜んでくれている。
涙でぼやける視界の先には、舞台袖で、雪矢さんもやさしく微笑んでいた…。



