どうして?
いや、もうちょっと待てば…。
と長い数瞬を置いても、曲は流れる気配がない。
動揺し始めるわたしのイヤホンに、雪矢さんの沈痛な声が聞こえた。
『音源が消えた』
背筋が凍るのを感じた。
動揺にイヤホンをしていた彪斗くんも、強張った表情を浮かべている。
舞台袖にいる裏方さんたちも、バタバタと慌ただしく動き始めているのが見える。
『さっきまでは…ダンスパートの時まではあったんだ…
けど、ちょっと席を外した隙に…』
わたしの脳裏に瞬時に嫌な考えが浮かんだ。
玲奈さん…。
機械室から戻って来たように歩いていた、玲奈さん…
どうして…そんな…
こんなこと…
こんなこと…!
ここまでせっかくきたのに。
みんなでがんばって来たのに…!
観客席も事態に気づいたのか、どよめきが起き始めている…。
「優羽…」
彪斗くんが、そっとわたしを呼ぶ。
気づかうようなその表情を見つめたわたしは、くじけそうになる心に鞭を打った。
そう。
ここまできたんだ。
ここまできたのに、こんなことでなんか、終わりたくない。
だってわたし、こんなすごいこと、この学園に来る前はしたいとも思えなかった。
わたしは、思っていることも満足に人に伝えられない臆病者だった。
でも変われたの。
みんなのおかげで。
彪斗くんがくれた勇気のおかげで…。
ね、だから見てて。
彪斗くん、わたしを見守ってて。
今から、あなたのおかげで生まれ変わった、わたしを見せるから。



