彪斗くんはその後もステージに残って演技を続けている。
なにごとも無かったように、俺サマな王子様に戻って、
『ガラスの靴を頼りに、シンデレラを必ず見つけよ』と命じている。
よし、あともう少し。
最後はふたりで作ったあの曲を歌う場面が待っている。
ドレスからボロ服に着替え終わっても、まだ少し出番には時間があった。
水分を取ってちょっとリラックスしていたら、思い出したように、胸がドキドキしてきた…。
なんだか、緊張…してきたなぁ…。
こんな大勢の前で歌うのは初めてだしな…。
こ、こんな時は誰かとおしゃべりして気を紛らわそう…
と思っても、裏方さんも大忙しだし、寧音ちゃんも洸くんも出番が近いので話し掛ける隙がない…。
うーん…
けっこう大声でセリフを張り上げてたつもりだから、声も枯れてないか心配だし…
ちょっと発声練習しよっかな。
と、通用口から廊下にそっと出たところで、
「あ、あら」
わたしは、見覚えのある人と鉢合わせした。
「…玲奈さん?」
玲奈さんは笑顔を浮かべて、「おつかれさま」とちょっとぎこちない口調で言った。
ここ、関係者以外立ち入り禁止なんだけどな…。
どうしてこんなところに…。
「ちょっとお手洗いにね」
「…お手洗いなら、ここをもうちょっと行った先ですけど…。
あっち行っても…機械室しかなかったですよね?」
「そ、そうなのよ。だから引き返してきたんだけど…」
お手洗いって言ってしまったのが気まずかったのか…
玲奈さんはなにかそわそわしている。
「それよりも、さっきのダンス素敵だったね、見ちがえたわ。
劇もなかなか楽しいじゃない」
「ありがとうございます」
「この前は、ひどいことして悪かったわ。
…がんばってね」
「…はい」
玲奈さん…わたしを認めてくれた…のかな…。
そそくさと行ってしまう玲奈さんの華奢な背中を見つめていたら、
「優羽ちゃん?」
機械室にいるはずの雪矢さんが通用口からでてきた。
「雪矢さん、機械室じゃ?」
「ちょっと反響版の角度を確認したくてね。
もう間もなく歌のパートだろ?」
「あ、はい…!」
言われて思い出す。
ああ、もう時間ないな…戻らなきゃ…。
「さっきのダンスパートもすごく良かったよ。
この調子でがんばって。
君にとってはきっと、次が本当の本番だから」
そうだ…。
そのとおりだ。
わたしの歌声を多くの人に聴いてもらう初めてのステージ…
不思議と緊張は消えて、胸が高揚してくる…。
「はい。
がんばりますね」
わたしは、にっこりと笑った。
この後、非常事態が起こるなんて、
夢にも思わず…。
※
なにごとも無かったように、俺サマな王子様に戻って、
『ガラスの靴を頼りに、シンデレラを必ず見つけよ』と命じている。
よし、あともう少し。
最後はふたりで作ったあの曲を歌う場面が待っている。
ドレスからボロ服に着替え終わっても、まだ少し出番には時間があった。
水分を取ってちょっとリラックスしていたら、思い出したように、胸がドキドキしてきた…。
なんだか、緊張…してきたなぁ…。
こんな大勢の前で歌うのは初めてだしな…。
こ、こんな時は誰かとおしゃべりして気を紛らわそう…
と思っても、裏方さんも大忙しだし、寧音ちゃんも洸くんも出番が近いので話し掛ける隙がない…。
うーん…
けっこう大声でセリフを張り上げてたつもりだから、声も枯れてないか心配だし…
ちょっと発声練習しよっかな。
と、通用口から廊下にそっと出たところで、
「あ、あら」
わたしは、見覚えのある人と鉢合わせした。
「…玲奈さん?」
玲奈さんは笑顔を浮かべて、「おつかれさま」とちょっとぎこちない口調で言った。
ここ、関係者以外立ち入り禁止なんだけどな…。
どうしてこんなところに…。
「ちょっとお手洗いにね」
「…お手洗いなら、ここをもうちょっと行った先ですけど…。
あっち行っても…機械室しかなかったですよね?」
「そ、そうなのよ。だから引き返してきたんだけど…」
お手洗いって言ってしまったのが気まずかったのか…
玲奈さんはなにかそわそわしている。
「それよりも、さっきのダンス素敵だったね、見ちがえたわ。
劇もなかなか楽しいじゃない」
「ありがとうございます」
「この前は、ひどいことして悪かったわ。
…がんばってね」
「…はい」
玲奈さん…わたしを認めてくれた…のかな…。
そそくさと行ってしまう玲奈さんの華奢な背中を見つめていたら、
「優羽ちゃん?」
機械室にいるはずの雪矢さんが通用口からでてきた。
「雪矢さん、機械室じゃ?」
「ちょっと反響版の角度を確認したくてね。
もう間もなく歌のパートだろ?」
「あ、はい…!」
言われて思い出す。
ああ、もう時間ないな…戻らなきゃ…。
「さっきのダンスパートもすごく良かったよ。
この調子でがんばって。
君にとってはきっと、次が本当の本番だから」
そうだ…。
そのとおりだ。
わたしの歌声を多くの人に聴いてもらう初めてのステージ…
不思議と緊張は消えて、胸が高揚してくる…。
「はい。
がんばりますね」
わたしは、にっこりと笑った。
この後、非常事態が起こるなんて、
夢にも思わず…。
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