彪斗…くん…。
その熱にすっぽりと包まれるわたしの耳元で、掠れた声が絞り出される…。
「ごめんな…俺…
傷つけて…ごめん…。ごめん…」
こんな声の彪斗くんは初めてで…。
こんなに泣きそうな彪斗くんは初めてで…。
すべての想いが詰まったその一言に、わたしも涙をこぼしそうになる。
ううん…いいの。
いいの。
大好きだよ。
彪斗くん。
もう、どこにも行かないで…。
行かないでね…。
抱き締め返そうと、腕を伸ばしたところで、はっとなった。
シンデレラを抱き締めたまま微動だにしない王子様に、
ざわざわと観客も訝しがり始めていたから…。
ゴーン…
と、その時、ナイスタイミングで十二時の鐘が鳴った。
シンデレラはここで、王子様と離れなきゃならない…。
彪斗くんがゆっくりと腕を下ろしたところで、わたしはのろのろと後ずさり、
『ごめんなさい…わたしもう行かなきゃ…』
とセリフをつぶやいて、本当に後ろ髪を引かれるように、何度も何度も振り返りながら、舞台袖に戻った。
彪斗くんは、ふっと気づいたように残されたガラスの靴を手に取った。
手で弄びながら、少しずつ気を取り直したみたいで、その後はなんとも無かったように演技を続ける。
ああ、びっくりした…。
でも、彪斗くんの温もりと声は、まだ身体全体に残っていて、わたしは思わず、ぎゅっと自分の身体を抱き締める…。
「優羽ちゃーん!!!」
と、そこへ、余韻に浸るひまもなく抱きついてきたのは、寧音ちゃんだ。
「よかったよ優羽ちゃん!
すっごいよかった!私もう泣きそうになった!!」
「そ、そんなことないよ…最後はやっぱり失敗しちゃったし…」
「ダンスは最後はちょっと惜しかったけど、でもほぼ完ぺきだったよ!
でもそれ以上に…!」
寧音ちゃんは、まるで自分のことのように、
嬉しくてたまらない、って満面の笑顔を浮かべた。
「できたんだね!?
彪斗と仲直り」
「……」
仲直り…か。
さっすが寧音ちゃん。
もうとっくに解かってたんだな…。
わたしはおずおずとピースサインを出すと、笑顔を返した。
「うん…できたよ。仲直り。
ばっちりだよ…!」
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