わたしね、
キスしてもらえて、本音はすごくうれしかったんだよ。
ただびっくりしてしまって…つい、ひどい態度をとってしまった…。
わたしもね、
大好きなんだよ。
彪斗くんが、大好きなの…。
ダンス中は、雑音が入らないようにマイクは切られている。
わたしはダンスしながら、そっと小声でささやいた。
「心配したんだよ、彪斗くん。
連絡してくれなきゃ、困る」
「…悪かった」
彪斗くんはそっぽを向いたままぽつりと返した。
うれしくなって、わたしは笑顔をこぼしながら続ける。
「でも、良かった、間に合って…。
わたし、ダンス、上達したでしょ?」
「ああ。
がんばったんだな」
からかうでも、お世辞を言うでもない素直な口調に胸がいっぱいになるのを感じながら、
わたしはうん、うん、と何度も小さくうなづく。
「そうだよ…今日この日のために、がんばったんだよ」
「ん…」
「彪斗くんとこうして踊るために、がんばったんだよ」
「ん…」
そしてちかづく、最後の見せ場。
低い成功率のまま、本番まで来てしまったパート。
抱きかかえてもらいながら、ぐるりと一回転、
そして降りて、ターンして、その勢いのままターンしながら戻って…
抱き寄せられて、静かに終わるはずなんだけど…
あ…!
やっぱり、彪斗くんとの距離感が上手くつかめない…。
中途半端な所でターンが終わり…
このままでは、抱き止めてくれる人がいなくて転んでしまう…!
と焦ったけど…
そんな無様な事態に陥ることはなかった。
わたしは彪斗くんの腕の中にいて…
きつくきつく、
息もできないくらいきつく、抱き締められていたから。



