舞台袖で間もなくやってくる出番を待ちながら、
なぜか、わたしは脚を棒のようにさせて動けずにいた…。
彪斗くんが戻ってきたら、こういう顔で迎えよう、あんな言葉を言おう、って考えていたのに。
いざこうして前にしたら、頭が真っ白になってしまった…。
「…優羽ちゃん!
出番だよ」
そんなわたしの背後で寧音ちゃんが声をかけてくれた。
「大丈夫。ここまで完璧だったもん、できるよ。
行って!
彪斗が待ってるよ!」
わたしは大きく息を吸うと、意を決して、ステージに向かった。
わぁ…
ステージに出た瞬間、観客席から不思議などよめきが聞こえた。
え…なん、だろ…。
おそるおそるチラ見すると、ほとんどの人がわたしを見つめて、耳打ちあったりしている。
え、な、なにかヘンかな…!?
ドレス姿を披露するのはこれが初なんだけど、なんか、おかしかったかな…?
ああ、でももう気にしても仕方ない…!
彪斗くん、ううん…王子様が、ゆっくりと近づいてくる。
黒髪はいつもよりハードなワックスで撫でつけていて、
いつもの色っぽさに凛々しさが加わって、すごくかっこいい…。
でも、その目は…わたしに留まっているけど…
本当は見ていないみたいに、とても遠くて…
冷たさまで感じた…。
やっぱり…
怒ってる…のかな…
背筋が、さっと冷えて。
泣きだしてしまいたくなるような気持ちに襲われる。



