「大丈夫だよ、優羽ちゃん。
彪斗はきっと来るよ。
だってあの彪斗だもん!
優羽ちゃんのヒーロー役を途中で投げ出したりなんか、するわけないじゃない!」
押し黙っているわたしを心配してくれたのか、寧音ちゃんが励ましてくれた。
「うん…」
そうだよね。
あの彪斗くんが、なにかを途中で投げ出すなんてこと、するわけがない。
わたし信じる…。
彪斗くんを信じる。
「あー、あれ、マキプロの社長じゃね?
すっげー、あんな大御所までくるとは…
たかが学校祭の劇だぞ」
「うわ…一番前にはジーベックスの営業部長までいるよーぉ?
ちょっと、さすがに緊張してきた・・」
開演間際。
舞台袖から観客席をのぞく洸くんと寧音ちゃんが、そろって顔をしかめた。
「わ…すっごい人…」
ふたりの背後からのぞいたわたしも、びっくりする。
三千人は入る観客席には人が溢れかえっていて、立ち見スペースすらない状態だった。
けど無理もない…。
だって敏腕プロデューサーの一瀬雪矢さん総指揮で、出演者と言えば、今をときめく売れっ子の寧音ちゃんや洸くんだし。
しかも、王子様役は、子役を引退して以来、滅多に表舞台に姿を出さなくなった彪斗くんだ。
この前のパークにいた大学生のお姉さんがいい例で、露出は極小と言えども、彪斗くんのことを知っている人は知っている。
この機会を逃せば、今後、生の惣領彪斗を拝めれないかもしれない、と躍起になっているんだ…。
ただの学校祭の劇といえ、これほど豪華なものは、そうそうない…。



