「…って、あれ…困ったな…」
雪矢さんのやさしい顔に、苦笑いが広がった。
「どうして泣くの…優羽ちゃん」
「だって…」
わたし、あんまりにも雪矢さんにひどいことを…。
けど、雪矢さんはわたしの頭をそっと撫でてくれた。
「大丈夫…。
君への気持ちは、とっくの前に諦めてたよ」
「え…」
「そうだなぁ、パークに行った時が、決定的だったかな」
そんなに前から…?
「あの時、ほんとは彪斗と行きたいって思ったでしょ?
君のその気持ちが分かった時点で、『ああやっぱりダメなんだな』って。
ふふ…。
やっぱり君って、すぐ表に出ちゃう小悪魔ちゃんだよね」
「……」
「それでも、まだ少しくすぶるものがあって、踏ん切りがつかなかったけど…
ありがとう。
これでやっと、吹っ切れたよ」
「…ごめんなさい、
わたし…ごめんなさい…」
「いいんだ。
俺の方こそ、けじめをつけれてよかった。
今度からは、もうちょっと真剣に恋愛をしてみようって思ったし…。
だから…
俺はもういいから、行って?」
雪矢さんは、やさしく涙をぬぐってくれながら言った。
「早く行って、あの俺サマくんを安心させてあげて?」
わたしは、大きく息を吸って涙をこらえると、
こくり、とうなづいた。
そして、精いっぱいの笑顔を浮かべた。
今更ながら、気づいた…。
わたしを導いてくれたのは、彪斗くんだけじゃなかったんだ…。
「ありがとうございます。
本当に…ありがとうございます…」
「ううん…。
俺の方こそ、君に出会えてよかった。
ありがとう」
いつか、雪矢さんの創ってくれた曲で歌ってもいいですか…?
今度、そう訊いてみようと胸に誓いながら…、
わたしは深々とお辞儀をした。
そして、
寮へと踵を返した。
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