わたしを上から下へとまじまじと見つめると、雪矢さんは冗談めかして微笑んだ。
「麗しき姫君。
そんなお姿で、いったいどこの国から迷われてきたのですか?
しかもそんな可愛い泣き顔で」
…もういい加減、俺を翻弄するのはおやめくださいますか…
ふっと微笑が強張って、そうつぶやいたように気がしたけど、
雪矢さんはまたすぐにニッコリ笑って続けた。
「どうしたの?俺で良ければ話して?」
「いえ…」
「そんな可愛い泣き顔されてちゃ、放っておけないでしょ」
「……」
「彪斗と、なにかあった?」
ぎくり。
となったけど黙っていた。
でもわたし、表に出やすいのかな…。
「図星だ」
雪矢さんに苦笑いを浮かべられてしまう。
「ケンカでもしたの?」
首を横に振った
「じゃあ、怒られた?」
怒られた…
そうかもしれない
あれは…まるで怒っているようだった。
なにかを押し付けるような、
どうしようもなくて、苛ついているような、
激しい感情をこめた、キス…。
「…もしかして、
キス
でもされたのかな」
「い、いえ…!
そんなこと…!
キスなんてそんな!」
ああもう、こんなに全否定したら、かえってバレバレだよね…。
「ふふ。
やっぱり優羽ちゃんって、素直だよね」
ほら…。
「すぐわかったよ。
だってしきりに唇を気にしてるんだもん」
「って、え…!?」
思わずわたしは両手を後ろにした。
…わたしったら、さっきから唇ばっかりふれてたんだ…もう。
くすくす、と雪矢さんが笑う。
つられて笑みをこぼしたわたしの目には、いつしか涙が消えていた。



