戸惑うような表情を浮かべる優羽の左頬をそっと、そっと包んで、
俺はニッと口端をあげた。
「…じゃあ教えろよ。
俺がこれからすることも、
おまえにとっては、
『意地悪なこと』に、なるのか?」
細い腰を抱き寄せる。
「あや…」
そして。
不安げに俺を呼ぶ声を押し消した。
唇で。
抱きしめた身体は、気の抜けたようにおとなしかったが、
長く深くキスを重ねるにつれて、次第に身を強張らせ、抵抗の挙動をみせ始めた。
けど俺は、抱きすくめてそれを封じる。
「や…やっ…」
「なにがいやなんだよ。
雪矢としたかったのか」
「ちがう…そうじゃない…」
「…っそ」
もう、なんでもいい。
唇、
すっげぇやわらけぇ、甘ぇ。
夢にまで見た唇を、思う存分味わう。
それと同時に、俺は安心していた。
これが、優羽の初めてのキスなんだと解かったから。
その証拠に、優羽は途中からすすり泣きを漏らしていた。
無理もねぇな。
だって、初めてには、かなり刺激の強いキスだから。
「…いじ、わる…
意地悪…!」
ようやく唇を離してやると、
優羽は俺を押し退け、濡れそぼった唇から鋭い言葉を投げつけた。
そして、
小鳥のように素早く、部屋から出て行ってしまった。
「そっか。
やっぱ俺、意地悪か…」
独りきりになった俺は、真っ白になるくらいの冷静でいながら、優羽からの返事を繰り返した…。



