「…優羽」
俺は、奪われそうな宝に手を伸ばすように、優羽の頬を手の平で覆った。
「…っ」
が、拍子に、びくりとその肩が震えた。
「…どうした??」
「ううん…」
なんでもない…と言うが、
俺は頬に目を凝らした。
チークで気づかなかったが…
左頬だけ赤みが強くみえる気がした。
「…もしかして、叩かれた頬が痛むのか?」
俺は呆然としながら続けた。
「…わりぃ、気がつかなかった…。
乱暴にしすぎた…ごめん…」
「…大丈夫だよ。
ちょっと、びっくりしただけだから…」
微笑んで見せる優羽だけど。
気づいちまった俺には、もうそんな健気な強がりを見るのが苦しかった。
「いい加減教えろよ。
誰にやられたんだ?」
「……」
「…玲奈か」
動揺したように、頬が微かに強張った。
「はぁ。
やっぱり、な…」
ほんと、どうしようもねぇ。
と、俺は心の中で、自分に叱りつけた。
玲奈のことは俺も気にかけていたし、
最近様子がおかしいってことも、寧音からこっそり聞かされて、
『私は最近忙しいんだから、優羽ちゃんのこと、しっかり守ってあげてよね』
と、口うるさく言われていた。
寧音のヤツ。
優羽のこの顔を見たら、キーキーうるせぇだろうな。
でも、今日ばっかりは…そうだな、
あのクソガキに、おもっくそ叱られても仕方ねぇ。
くそ…。
なんのために、みっともなく毎日報告を強要してんだ。
なんのために、甲斐甲斐しく迎えに行ってるんだよ。
なさけねぇ。
さんざん俺様でいときながら、肝心な時はこれかよ…。



