「気に入ったか」
「うん…。
すごく、すごぉく、いい曲。
なんか不思議…」
「なにが…?」
「こうやって即興で作るのは、お父さんともよくやってたことなのに…。
…彪斗くんと作ると、すっごくたのしくて、何倍もわくわくして、胸がドキドキする…
こんな感じ、はじめて…」
なんだろう…
…この気持ち…。
独り言のように呟いた優羽の声。
困惑したような掠れた声には、どこか甘く切ない響きがあって…
俺の胸まで、静かに高鳴らせる…。
「わたしね、思ったの」
「…なにを?」
「これからも、彪斗くんの曲で歌えたらいいな、って。
彪斗くんと歌にふれていたいな、って…」
「歌えるよ。
何曲だって、作ってやる」
「…ほんと?」
「ああ。
忘れたのか?おまえは、俺のもんだろ。
俺の作ったものしか、歌わせない。
他のやつが作った曲なんか、絶対歌わせないからな。
どんな大御所のでも、ヒットメーカーのでも…」
ちらり、
と脳裏に、雪矢の顔が浮かんだ。
ち。
なんでこんないい雰囲気の時に、あいつなんか思い出すんだ。
…いや。
強がったって、しゃあねぇ、かな。
いい加減認めるしかない。
ほんとは気になって仕方なかった。
優羽は雪矢のことをどう思ってんのか、って。
雪矢は女の扱いがとにかく上手くて、節操がない。
優羽もそんな雪矢の本性にはなんとなく気づいてはいたようで、前は『俺のほうがずっとやさしい』と言ってくれたが。
今回の雪矢は本気だ。
きっとアイツも俺と同じく優羽に初めての恋をしたんだろう…。
あいつは俺とちがって、自分の気持ちを真っ直ぐに、しかも巧みに伝えられるムカつくやつだ。
気を緩ませたら、すぐに盗られちまう…。
誰にも渡したくない。
優羽は、俺だけのものだ。
なのに、あんな光景、見ちまうとは―――。
さっき優羽と雪矢がふたりっきりになっていたのを見てしまった瞬間、不安は一気に膨れ上がってしまった。
あの時、
雪矢は優羽になにを言っていたんだ。
なにをしたんだ??



