「『貴方に初めてお会いした時、まるで時が止まったかと。こんなに―――』えーと…」
「『惹かれたのは』」
「そ、そう!『惹かれたのは、生まれて初めてで―――』えー…」
超長ゼリフに、優羽は四苦八苦していた。
しかも。
「『…由緒正しい血筋でもありません。
こんなわたしでもあ、あ…あい…あいし…』」
どうした…優羽…
「『あいして…』
うー言えない…っ!言えないよ!
『愛してくれますか?』なんてっ」
「はぁ!?
たかがセリフだろうが!」
「恥ずかしいよ!たくさんの人がいる前で、そ、そんな」
「アホかーっ!!
おまえがやりたいって言った役だろうがっ!!」
初心な優羽には、たとえ劇中だとしても、男に面と向かって
『愛してくれますか?』
なんて、恥ずかしいこと、言えないらしい。
そんなガキっぽいところも可愛いとは思うけど…
俺としては、ぜひ面と向かって言ってほしい言葉なんだがなぁ…!
なんか…
みじめでいい加減泣けてくるケド。
この場面に限らず。
ぶっちゃけ、優羽の演技はあまりいいとは言えなかった。
いや、
元役者の立場から言おう。
超、ド下手だ。
覚えたのを口にするのが精一杯で、セリフはほとんど棒読みだし。
もうちょっと感情をこめろと言えば、セリフが飛ぶし。
もう、目も当てられない。
って言っても、こいつは素人だし、
それに『歌手』だからな。
歌の心を理解し、声に乗せて伝える。
その技量と才能にかけては並ぶものがないんだから、
これでさらに畑ちがいの素質まで求めたら、罰が当たるってもんだ―――
って。
突如、俺の頭にピカリとアイディアが閃いた。



