彪斗くんは、無表情だった。
怒るでも、馬鹿にするでもなく、
ただただ無表情の、なにを考えているのか解からない顔。
すこし肩で息をしているのは、走ったからなのかな…。
わたしが急にいなくなったから、駆け回って捜してくれたんだね…。
チクンと痛む胸を無意識に抑えると、
「彪斗?」
雪矢さんも気づいて、振り返った。
「なんだ。お早い登場だな。
しかも、絶妙のタイミング」
からかうような口調で言った雪矢さんには目もくれず、彪斗くんはずんずんとわたしに近づいてくる。
「ご、ごめんなさい、彪斗くん…
勝手にいなくなっち」
「その頬、どうした」
「え…」
「どうしたって聞いてんだよ…!」
凄みのある声に、びくっ、とわたしは口ごもってしまう。
こらえきれず弾けたように泣きだした玲奈さんがチラついた…。
なんとなく、本当のことは言いたくない気がした。
「大丈夫だよ、彪斗。
感謝しろ。
おまえの小鳥はしっかり俺が守ってやったよ」
棘のある言葉を言う雪矢さんをギロリとにらむと、
「行くぞ」
彪斗くんは強い力でわたしの手をつかんだ。
「い…痛い、腕が抜けちゃうよ…!」
けど、彪斗くんは聞く耳持たない様子で、わたしを強引に引っ張っていった。
そんなわたしに、雪矢さんは黙って手を振るだけだった。
少し寂し気な顔で…。



