「さて、これで心配事は無くなったな。
じゃ、行こうか。
確かこの先をしばらく進めば、小さな動物園があるって…なになに、この先五百メートル、ね」
と、彪斗くんは木をくりぬいて作った道標を確認して、心配そうな顔でわたしに振り返った。
「だいじょうぶか、優羽」
「え?」
「この先、五百メートルも歩けるか?
そんな膨れた腹で」
かぁああ…!
さっきお腹を撫で回されたのを思い出して、顔が熱くなる。
「もう!彪斗くんのイジワルっ!」
「あははは!そんな怒んなよ」
怒るよ!
もう、もっとデリカシーってものを意識してほしいな!
けど。
なんだか可笑しくて、
笑いがこぼれてしまう。
雪矢さんには悪いけど…
やっぱり、
彪斗くんといると、楽しいな…。
「ほら、行くぞ」
と差し出された手に、わたしはそっと手を重ねた。
ぎゅっと握られて、
ドキリ
と高鳴り始めた鼓動と一緒に、わたしたちは歩き始めた。
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