「ね、同じ事務所のよしみなんだしさ、
君がなにかあった時は、全力でサポートするから」
頼むよ、と手を合わせるおじさん。
雪矢さんは戸惑っているけど、もう辺りは雪矢さんが本物だと気づいていて騒ぎになりつつある…。
ここを切り抜けるのは至難の業、ですよね…雪矢さん…。
「じゃもう時間がないから!
よろしくね!」
「あっ、ちょっと!」
今度は雪矢さんが引きずられていく。
「え、あ…わたしも…?」
雪矢さんが手を離さなかったから、わたしもつられるけど、
「残念だったな雪矢!
オシゴトがんばれよー」
ぐいっと引っ張られ、彪斗くんの胸に閉じ込められた。
「てめっ彪斗っ!!
おまえこそ勝手なことしやがって!」
「俺が勝手なのは最初からだよ。
ほら女の子たちが待ってるぞ。
そんな怖い顔しないで、王子様スマイルスマーイル」
ひらひらと手を振って、まだなにか悪態をついている雪矢さんを見送ると、
彪斗くんはニッと勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
「よし。
これで邪魔者はぜーんぶ消えたな」
その悪い笑顔を見て、わたしは思い出した。
そうだ。
彪斗くんこそ、ワガママし放題の王様なんだった…。
「さて行くぞ、優羽。
こっからがデート本番だ」



