最近分かったことがあるんだけど。
彪斗くんそんな表情を浮かべている時って、
本当はすごくつらいって思ってるのを、我慢している時なんだよね…。
彪斗くん…。
彪斗くん…。
わたしも、彪斗くんといたいよ…。
引き摺られるように、雪矢さんと店を出ていこうとしたその時だった。
「…きみ、一瀬雪矢くんだね!?」
ちょうど店に入ってきたスーツを着た中年の男の人が、雪矢さんを見るなりにじり寄ってきた。
一瀬雪矢
と聞いて、店内の他のお客さんも振り返る。
「…え、いや俺は」
「いや、わたしは誤魔化されませんよ!」
とすごい勢いで叫ぶなり、おじさんは雪矢さんがかぶっていた帽子を取ってしまった。
「やっぱりそうだ!。
たすかったー!地獄に仏とはこのことだ。
実は私、そこのイベント会場で販促イベントをしている者でして―――」
と名乗ると、知り合いだったらしく、雪矢さんも愛想笑いを浮かべた。



