「でも予約しちゃったのは事実なんだよ?
せっかく松川さんが無理を叶えてくれたのに、キャンセルしたら、松川さんに悪いでしょ?」
松川さんが…。
わたしたちの面倒を細やかにみてくださっている松川さん。
ずっと年上だけど、やさしく見守ってくれるところがお父さんに似ていて…わたしは大好きだった。
松川さんに迷惑は、かけたくないな…。
でも。
そう思っていても、どうしてか私の心はもやもやする…。
一緒に水を掛け合って、はしゃぎ合った彪斗くん。
ガキか、って雪矢さんには言われたけど、でも子供に戻ったみたいで楽しかった。
すごく楽しかったの…彪斗くんといて。
だから、
もうちょっと、
彪斗くんといたいよ…。
けど、彪斗くんは腕を緩めると、わたしの腰から手を離した。
「雪矢と行ってこい」
「え…」
「雪矢の言う通りだ。
松川さんに迷惑かけられない」
「で、でも、彪斗くんが」
「俺はいいよ」
見上げると、彪斗くんは穏やかに目を細めた。
「松川さんにはいつも世話になってんだ。俺だって松川さんに迷惑かけたくない。
雪矢とデート、してこいよ。
…その代わり、帰ったら俺ともデートしろよ」
「彪斗くん…」
「だって。優羽ちゃん。
よかったね、これからの時間は君を解放してあげるって。
おいで、美味しいパフェをご馳走してあげるよ」
と、わたしの手をつかんで、雪矢さんは店から出て行こうとする。
彪斗くんはそっけなく下を向いて、なんてことない、って態度をとっている。
けど、わたしは見つける。
眉間にしわが寄っているのを。



