「彪斗なんて数に入ってないよ。
カップル限定のカフェで、ふたりきりじゃないと入れないんだから…」
「で、でも…彪斗くんが…」
「なかなか予約がとれない人気店なんだよ?
たまたま店長が松川さんと親しかったから、無理を言ってとれたのに、
彪斗のためにキャンセルしたら、松川さんに悪いでしょ?」
「予約、だと?」
わたしの隣で、彪斗くんが凄みのある声を出した。
「こら、優羽」
急にぐいっと腰を抱き寄せられて、わたしは雪矢さんから引き離された。
彪斗くんが後ろからわたしの腰に手を回して、ぎゅっと抱きしめてきた…。
それだけでびっくりするのに、
その手が、無遠慮にわたしのお腹をなでた…!
「おまえ、お腹パンパンじゃねぇか。
昼飯食いすぎ」
「やぁああ…!!
さわんないでよっ…!」
恥ずかしくて暴れてしまうわたし。
でも、黙らせるようにさらに強く抱きしめられると、耳元で囁かれた。
「パフェなんか食って、太っちゃったら困るだろ。
…ま、ちょっとくらい太っても、よけい美味しそうに見えるだけだけどな」
「……」
「だから、これから歩いて動物園いくぞ。
おまえ、動物好きだったろ」
そして、彪斗くんは急にこわい声になって続けた。
「雪矢。この腹黒野郎。
優羽は五人で遊びたいって言ったんだぞ。
予約入れてた、ってことは優羽とふたりっきりになるよう目論んでたってことじゃねぇか。
たまたま洸と寧音が帰っちまったが、五人で残っていたとしても優羽を連れて行くつもりだったんだろ。
優羽の気持ちを無視しやがって。
おまえこそ、サイアクな身勝手野郎だよな」
雪矢さんは余裕の微笑を浮かべた。



