「もしもーし。
え?あーはい。今日オフなんすけどー」
しかめ面から見ると、仕事関係者からみたいだ。
「えー。今日なら大丈夫っていったじゃーん。うそつきー。
…うん、はいはーい。
わかりましたーじゃー今から行きますーぅ」
最後はほとんど投げやりになって、洸は通話を切った。
「わりぃ。急な仕事はいっちゃったー。
もうちょいしたらマネージャー迎えにくっから、俺戻るわー」
「えー」
「なんだよ寧音―。
俺が戻ったらさびしーの?」
「さびしくなーい。
でもせっかく優羽ちゃんの歓迎会なのにぃ」
とぼやいた寧音のケータイも急になった。
「ひぁあ…うそでしょぉお」
「どうしてでないの?寧音ちゃん」
「だってこの音、マネージャからなんだもん…。
絶対洸の二の舞だ…」
「出てよ、寧音ちゃん。
大事なお仕事のおはなしでしょ?」
「うー」
寧音はほとんど泣きそうになりながら話して、通話を切った。
「ごめんね優羽ちゃん…。
私も戻らなくちゃ」
「ううん、気にしないで。
今日はすっごく楽しかったから、もう十分だよ。
わたしのために、どうもありがとう」
「ううう優羽ちゃん!!
売れっ子はつらいよぉおお」
「うんうん、つらいね…」
そうして洸と寧音を見送って、俺たちは三人になった。
なんだかんだ言いながらも、優羽はやっぱりさびしそうな顔をしていた。
いや、正確には心細い、かな。
寧音がいなくなって、俺と雪矢と三人きりになってしまったのだから。
けど、俺にしてみれば、
ラッキぃ…。
これはもう、千載一遇のチャンスだ!!
けどそれは雪矢とて同じ…。
なんとしても雪矢のおジャマ野郎を排除せねば。
とちらりと見たところで、雪矢と目が合った。
ふっと小さく漏れる、澄ました微笑。
上等だ。
勝負開始だ。



