「どこまで行ったかと思ったら、こんな所にいたのか。
さぁ、早く戻ってレッスンを始めるんだ、優羽!」
須田さんの強い口調に思わず後ずさったわたしの前に立ったのは、彪斗くんだった。
「おい、今なんて言った?
あんた、誰の許可を得て、コイツ連れていくつもりなの」
「…彪斗…!?」
須田さんと雪矢さんは、顔を見合わせて、一瞬眉をひそめた。
さっきとは違って、少し媚びるような態度になると、須田さんが答えた。
「ひさしぶりだな彪斗。実はこの子は俺が見つけた歌手の卵なんだ。
これから売り出そうと磨いていくつもりなんだ」
「へぇ。でもこいつ、歌手やりたくないって言ってるけど?」
「き、来たばかりで戸惑っているだけだ。な、そうだろ、優羽」
急に優しい声色になって縋るように見てきた須田さんだけど、わたしは彪斗くんの陰に隠れるように顔をそむけた。



