「聞きそびれてたけど、おまえ、名前なんて言うんだ」
「た…たかなし、ゆう…です」
「たか、なし?ああ、なるほどな。それって芸名?おまえ、ここで歌手目指すのか」
ふるふる、ふるふる、とわたしはしきりに首を振った。
「じゃあなんでこんなとこに来たんだ」
「き、来たんじゃないの」
「来たんじゃない?あぁ、そういうことか。たまにいるんだよな。おまえみたいに、なんも知らないでここに入れられるやつ。ふぅん、カワイソーにな。芸能界なんて、入ってもろくなことないのに」
「わたしは…わたしは歌手になんてなりたくない。歌うのは誰のためでもないもの」
「ふぅん」
ふと、彪斗くんの表情が変わった。
「じゃあ、誰にも歌いたくないなら、俺の前だけで歌えよ」
え…?
「俺がお前を飼ってやる。
俺だけの前で、俺だけのために鳴け」
なにを言うの、この人…。
戸惑うわたしに、彪斗くんはおもむろにスマホをかざして見せた。
そこには、わたしの姿が―――さっきまで歌っていたわたしの動画が撮られていた。



