エレベーターは再び1階に付き外に出るとやっと一息つけた


会社ってこんな息苦しいもんなんだ


私はもう一度後ろを振り返るとため息をついて家路に向かって歩き出した




「七瀬!」



会社から数歩離れた所で、大声で名前を呼ばれた


振り返らなくても声で分かる



足音はすぐ後ろで止まり頭上からはハァハァと息づかいが聞こえる



「悪かったな。助かったよ」



私はゆっくり振り返ると朝と同じスーツを纏った滝沢先輩の姿

その姿を見て張り詰めた緊張が緩んだ



「あれで良かったんですよね?」


「あぁ、ありがとな。飯まだだろ?お礼に奢るよ。少し待ってろ」


そう言って有無を言わさず私の腕を掴んでまたビルの中に向かおうとする



「あの!私…ここで待ってたらダメ?」



ビルの中は嫌だ。

何よりあの受付けのお姉さんとはもう会いたくない。……怖いから



「分かった。この信号を渡って右に言った所に黄色い看板の洋食屋がある。そこで待ってろ、10分で行く」


滝沢先輩が指した方向を目で追うと、確かに黄色い看板のお店が見えた


私が頷いたのを確認した先輩は再びビルの中に消えてった