「とりあえずは、瞬からお前を奪う」


そう言って口の橋をゆっくり持ち上げた先輩は、背にしていた墓石を振り返ると


「悪ぃな、瞬。そーゆう訳だから、七瀬の事は諦めてくれ」


そう言った



なんだかその行動が妙に可笑しくて私は滝沢先輩の腕の中でクスクス笑った



―――瞬、ごめんね

私滝沢先輩の事好きみたい



私はゆっくりと手を滝沢先輩の背中に回した






その時、滝沢先輩の背中越しに、瞬が笑っていたような気がしたけど


直ぐに遮られた視界によって、あれは私が見た幻だったのか



滝沢先輩から与えられる甘い甘い口づけが終わる頃には瞬の姿はそこにはもうなかった




「私を置いてかないでね?」



「あぁ、絶対離さないから覚悟しておけ」


「……そっちこそ」



そう言って滝沢先輩の顔を見上げると満面の笑みを浮かべた滝沢先輩の顔が近付いてきて軽く唇が重なった






「よし、じゃぁ早速お前ん家行くか」


「何で?」


「これから一緒に暮らすんだから挨拶は常識だろ?」


「ええっ!?」




私たちは手を繋いで墓地を後にした




ずっと、一緒にね