「母さんが倒れたのは僕のせいなんです。
僕は母さんに心配ばかりかけて・・・」
「息子の心配をするのは母親として
当然の事だ。」
「僕が中学生になった時に父さんが
病気で倒れて亡くなった後、
母さんは一人で僕を育ててくれました。」
洸の父は中学生の時に亡くなり
一人息子である洸を母が女手一つで育てた
紗智や実、葉月が知らなかった話だったー・・・
けど先生は
「そのことは私もお母さんから聞いている。
お母さんは大した方だ。凄いと思うよ。」
「けど去年、僕が事故に遭って
さらに母さんを悲しませてしまいました。」
「洸君が事故に遭って、ここに運ばれた時は
凄くショックを受けていて
君の名前を叫んでいたよ。私も見ていて辛かった。」
「・・・・・。」
「君が入院してから毎日、見舞いに来ていた。
意識のない君に話しかけていた。」
「・・・・・。」
「君が目を覚ました時は凄く喜んでいたよ。
私は何もしていないのに頭を何度も下げて
お礼を言われたよ。」
「目を覚ました時、母さんが目の前にいて
母さんの涙を久しぶりに見ました。
父さんが亡くなった時から
母さんの泣いてる姿は見た事がなかった。
僕の前ではいつも笑顔でした。もしかしたら
陰では泣いていたんだと思います。」
「親とはそういうものだ。」
「僕、母さんが倒れて思ったんです。
いつも僕は誰かを傷付けて心配かけて
悲しませてばかり。
いつも誰かを泣かせてばかりいたんだ。」
「・・・・・。」
「母さんだけじゃなくて
事故に遭った時に側に居た幼馴染や親友。
実や紗智や葉月・・・たくさんの人を
僕は・・・。」
「洸君・・・。」
「僕は分かっていなかったんです。
自分がどれだけ、たくさんの人に
支えられていたことを。
分かっていたはずなのに
全然、分かっていなかったんだ。」
「・・・・・。」
「今までの事を思い出すと
みんなの笑顔や悲しそうな顔や
泣いてる姿が頭に浮かんで
凄く胸が苦しいんです!
母さんが倒れて改めて気付くなんて
僕は本当に最低な息子です・・・。」
「・・・・・。」
「・・・・・。」
洸の目から涙が溢れたー・・・
今まで流した涙よりも
この日流した涙は洸にとって
一番辛い涙だった・・・
そんな洸に黙って話を聞いていた先生が
話し始めたー・・・
「洸君。君の気持ちは分かるよ。
誰だって誰かを傷付けたり
悲しませたりしたくはない。
自分が知らないうちに相手を
そうさせていたと知ったら余計に辛い。」
「・・・・・。」
「けど洸君。君の周りにいる人達は
君が大切だから君が好きだから
傷ついたり悲しんだり涙するんだ。
何とも思ってなかったら
そんな思いをしないはずなんだ。」
「・・・・・。」
「お母さんは君が息子だから。
友達は君が大切な友達だから。
みんなそれぞれ君の存在が大切なんだよ。
だからなんだよ。」
「・・・・・。」
「君が自分のせいだと泣いていたら
また周りの人達を悲しませることになる。
今、君がやるべき事は泣く事よりも
他にやるべきことがある。
それはリハビリして歩けるようになって
退院して自分の道を歩む事なんだ。
今まで支えてくれた人たちが望むことなんだ。
そして君からしたら恩返しになるんだよ。」
「・・・先生・・・。」
「とにかく今は気が済むまで泣きなさい。
我慢しないで泣きたいだけ泣きなさい。
もう自分のせいだというのはやめなさい。
誰もそんなこと思ってないんだから。
約束してくれ。もう自分を責めないと。
分かったか?洸君。」
「・・・先生・・・。」
洸は先生の言葉に安心したのか
涙がさらに溢れたー・・・
先生は洸の背中を優しくさすった
その表情はとても優しかった・・・
そして病室での二人の会話を
廊下に居た実が聞いていたー・・・
「・・・・・。」
病室のドアにもたれかかるようにして
洸の気持ちを知り
そして自分の前では厳しい父の優しい言葉に
何とも言えない気持ちになる実だった・・・
そして洸から貰ったお守りを見つめ
その場から離れたー・・・
