clover*




「・・・・・。」

実は紗智の後ろ姿を見送った

「実。」

「ん?」

葉月が実に声をかけた

「私、優太君のお母さんと一緒に
優太君の側に居るね。」

「ああ、分かった。」

「うん。」

葉月は優太の母と病室の中へ入った

「・・・・・。」

廊下には実と実の父が二人になった


「驚いた。まさか親父があんなに
大声で感情的になるなんて。」

「・・・仕方ないだろ。
私も人間だ。感情的になる事もある。」

「だよな。」

「お前は行かなくていいのか?
洸君の所へ。」

「ああ。紗智だけの方がいいんだよ。
正直、俺・・・洸に会って
何て言ったらいいか分かんねぇーんだよ。」

「・・・実。」

「何だよ?」

「医大に行きたくないなら
行かなくていい。」

「え?」

「医者になりたくないなら
ならなくていい。」

「親父、本気で言ってんのかよ?」

「もちろん息子に
跡を継いで欲しいと思うのが
父親である私の願いではあるが・・・
中途半端な気持ちで医大に行って
大学を辞められたら困るからな。」

「何だよ、それ。」

「・・・洸君の言われたんだ。」

「え?洸?」



それは実にとって最後の大会の

一週間前ー・・・



「実の試合に?」

「はい。今度、実にとって
高校最後の大会があるんです。
先生、観に行って下さい。」

「何を言ってるんだ。
私は医者だよ?そんな暇は・・・。」

「医者の前に父親ですよね?」

「!」

「息子が大好きで大事にしている
バスケをする姿を見たいとは
思った事はないんですか?」

「・・・・・。」

「実は中学高校と六年間、
バスケ一筋に頑張って来たんですよ。
僕がもし実の親だったら
実を誇りに思います。」

「・・・・・。」

「すみません。
生意気な事言って。
でも実のバスケに対する気持ち
知ってあげて下さい。」

「・・・・・。」




「洸が俺の事を・・・?」

「ああ。
結局、観に行けなくてごめんな。」

「別に、仕方ねぇーよ。
親父は命を救う仕事してんだから。」

「洸君にも悪いことしたな。
せっかく言ってくれたのにな。」

「洸は、そんなんで
怒るような奴じゃねぇーよ。」

「でも洸君のおかげで
少しは分かったよ。
お前にも大事な物があるって事が。」

「・・・・・。」

「実。」

「何?」

「もう私は何も言わない。
お前が医大に行きたいなら行けばいい。
行きたくないなら他の進路を考えればいい。」

「親父・・・。」


プルル・・・!


すると実の父の携帯が鳴ったー・・・

「もしもし。分かった。今行く。」

実の父はそう言うと電話を切った

「私は仕事だから、もう行く。
優太君と洸君に何かあったら
すぐに連絡しなさい。分かったか?」

「ああ。」


実の父はその場から離れたー・・・


「・・・・・。」

実は一人になった


そして初めて知った


洸が親父に俺の事を話した事


試合を観に行ってくれって言ってくれた事


こんな俺を洸が父だったら


誇りに思うと言ってくれた事・・・


「あーもう!
たくっ・・・カッコつけやがって。」



実はその場にしゃがみ込んだ


「・・・・・。」

右手で頭をクシャクシャにして

左手には優太からの手紙を握りしめ


しばらくすると・・・


「・・・・・!」

実は立ち上がり

その場から離れたー・・・