「親父っ・・・!!」

実は院長室をノックをせずドアを開けた


「実。ノックぐらいしろ。
何だ、いきなり。」

実の父は実に注意した

「・・・あっ、ごめん・・・。」


実は息を切らしながら素直に謝った

実の父はソファに座りコーヒーを飲んでいた

コーヒーカップを置いて・・・

「何の用だ?用があって来たんだろ?」

実に聞いた

「親父に聞きたい事があって・・・。」

実は洸の事を聞こうと思ったが

なかなか言葉が出てこないー・・・

すると

「たいした用じゃなければ出てってくれ。
忙しんだ・・・。」

実の父が出てくように言うと


「洸の事だよっ!!」

実が言った

「洸君?洸君がどうした?」

実の父は少し動揺したが

冷静を装って実に聞いた


「俺が何を聞きたいか分かってんだろ?!」

「さぁ?何の事だか・・・。」

「親父は洸の担当医だろ?!
だったら教えてくれよ!洸の足の事!!」

「前にも言っただろ。
いくら息子でも患者の事を教えられないって。」


「俺-・・・さっき聞いちゃったんだよ。
洸が歩けるようになっても
バスケを諦めなきゃならないって。
本当なのかよっ?!」

実が聞くと・・・

「だから、お前に教えられない。
何度言ったら分かるんだ。」

「頼むっ!教えてくれよ親父!!
俺らにとって知らなきゃいけない事なんだ!
話が本当なら洸は一人、苦しんでんだよ!
紗智や葉月だって洸に何があったか分からなくて
混乱してて傷付いてんだよっ!!
俺らで洸を支えてやりてーんだよっ!!」

「子供のお前に何が出来る?!」

「!」

「お前に話して、お前に何が出来る?
洸君を支えたい?
そんな簡単な事じゃないだろ?
洸君が余計に傷付くって事ぐらい
友達なら分かるだろ?!
今はそっとしてやるのが友達じゃないのか?
何もせず、ただ見守る事が大事じゃないのか?
洸君が、お前達に話さないのは
洸君は、お前達を思って
何も話さなかったんじゃないのか?」

「・・・・・。」

「そんな洸君の気持ちを
お前は踏みにじるつもりか?
お前がしようとしてる事は
ただの自己満足でしかないんだ!」

「・・・・・。」

「・・・とにかく私から話す事はない。
洸君の事は、そっとしといてやれ。
リハビリすれば歩けるんだ。
これからの事は洸君が決める事だ。
お前には関係ない事だ。」

「けどっ!!」

「・・・私は忙しんだ。
もう話す事はない。ここから出てけ。」

「・・・・・。」

「お前が出てかないなら私が出る。
とにかく頭を冷やしなさい。
洸君や紗智ちゃん達に
余計な事を言うんじゃないぞ。」

実の父はそう言うと院長室を出たー・・・


一人、部屋に残った実は

「否定しなかったって事は
本当って事だよな・・・?」


そう呟いたー・・・


実の話を一つも否定しなかった


昔からそうだった


実の父は嘘をつくような人ではない


否定したり誤魔化したりしなかった


言いたくない事は絶対に言わない


昔から頑固だった


実は自分の父の性格を分かっていた


家族以外の人にも対して


その性格は変わらなかった


父の顔ではなく


医者としての顔を多く見てきたからー・・・


実は思った・・・


洸の様子がおかしかったのは


バスケを諦めろと言われたからだとー・・・


「何で・・・こんな事に・・・?」


実は頭を抱え

その場にしゃがみ込んでしまった