「バスケは諦めた方がいいと思う。」


「・・・・・。」

実の父である先生の言葉に

ショックで言葉が出ない洸


すると

「洸君。とにかく、
まずはリハビリを頑張ろう。
君はまだ若いんだ。
やりたい事だって何だって
いくらだって出来る。だから今は・・・」


「分かってます。
先生が言いたい事は。」

「洸君。」

「でも俺にとってバスケは
凄く大切な物なんです!
バスケを諦める事なんて出来ません!」

「・・・・・。」


「すみません。
来週からリハビリ頑張ります。
よろしくお願いします。」

洸は頭を軽く下げて

診察室を出た・・・

「・・・・・。」

実の父である院長は返す言葉がなかった


そして洸は車イスで病室に向かっていた


そして院長から言われた言葉が

頭から離れなかった


バスケを諦めろ?

何でそんな事、言うんだろう


そんな事出来るわけない

俺にとってバスケはー・・・


洸は不安でいっぱいだった



その頃、紗智はー・・・


「紗智ー今日、洸の所に行くのー?」

葉月が休み時間に

他の教室に移動する途中、紗智に聞いた


「うん。葉月も行く?」

「えー二人の邪魔したら悪いじゃん。」

「そんな事ないよ!」

「だってさぁー
文化祭が終わったばっかなのに
もう再来週、中間テストだよ?!
二学期の成績も進路に影響するから
頑張らないといけないんだよね。
だからテスト勉強頑張らないとなぁー。
だから今日も塾なんだよねー。」

「そっか。私も今日、洸に会ったら
しばらく会わないつもりなんだ。」

「何で?」

「だって私だって
勉強頑張らないといけないし。
それに洸も忙しくなると思うんだよね。」

「え?洸も忙しくなるって
どういう事?洸、何かあったの?」

「まだ、ちゃんとは聞いてないんだけど
洸、リハビリするかもしれないんだって。」

「リハビリ?それって
足の怪我、治ったの?!」

「洸が言うにはリハビリして
歩けるようになるまでは
完治とは言えないけど・・・・・。」

「でも足が治らないと
リハビリ出来ないよね?!」

「うん。」

「良かったじゃん!
洸が歩けるようになったら退院でしょ?
紗智、良かったねっ!」

「でもリハビリって大変みたいだし。」

「洸なら大丈夫だよっ!
紗智は彼女なんだから
紗智が信じなきゃどうするの?!」

「そうだよね・・・。
私、洸の力になるように頑張る!」

「頑張れ!」

「とにかく今日、洸に聞いてみる。」


この時、洸がどんな気持ちで居るかなんて

分からない私は ただ嬉しかった


いくら分からなかったとしても

私は洸の気持ちを知らずに

喜んでいた自分がひどい人間だと思った


洸は大好きなバスケを諦めろと言われたのに

それは洸に夢を諦めろと

言ってるのと同じなのに


洸の夢を知っていたのにー・・・




「紗智。」


「実。」

次の休み時間

紗智は実に話しかけられた


「今日、洸の所に行くのか?」

「うん。」

「・・・あいつリハビリ始まるんだって?」

「何で知ってるの?」

「葉月から聞いた。」

「そっか。」

「まぁーあいつから聞かなくても
何となく、そろそろかなぁーって
思ってたからさ。」

「何で分かるの?」

「お前、忘れてねぇーか?
これでも一応、医者の息子なんだけど?」

「ごめんっ!」

「いいよ、別に。」

「・・・実、医大に行く事にしたの?」

「ああ。そうだよ。」

「私、応援してる!頑張ってね!」

「・・・おう。
洸にリハビリ頑張れよって伝えといて。」

「うんっ!」


そして放課後ー・・・

紗智は何も知らず洸の所へ向かった