お粥の入ったお椀を持ち、ぷいっとそっぽを向いた私に、新井課長は小さなため息をついた。
「果穂さん、赤ら様に嫌な態度をしないで?」
そう言って
スプーンを持つ私の手首を捕まえた手のひらが熱い。
「…新井課長、申し訳ないですが、新井課長がなぜ、私を好きになって下さったのか、私にはいまいち、理解できないんです…。
その、私は…
一度のモテ期も経験しないまま、この歳になって」
「それは、果穂さんの周りにいた男の目が曇ってるだけです…。」
「でも実は私には…好きな人がいるんです。」
その相手が真島課長であることは口が裂けても言えないけれど…
口を裂いてでも言いたいけれど…
「好きな奴がいるから諦めてくれ?って?」
私を見つめるその眼差しは変わらず穏やかなのに…
悲しく感じるのは
どうしてなんだろう…。